2つの感覚が同時発生する共感覚

共感覚(synesthesia)という用語をご存知ですか?例えば、数字を思い浮かべた時に無意識に色も一緒に連想される感覚のことです。日本語では、特に若い女性たちの声援や楽しそうに話す声を「黄色い声」と呼んだり、英語では優しい人を「スウィートパーソン」と比喩します。これは共感覚を持っている人だけでなく、たいてい多くの人が共感できる表現方法です。では、共感覚とはこれら比喩表現とどう違うのか、具体的にどんな特徴があるのかをここでは説明したいと思います。

共感覚の特徴

私たちがレモンを想像するときに、舌に酸っぱい感覚が生じることがあります。これは実際にレモンを食べなくても、過去の体験から連想するだけで味覚が触発されるからです。共感覚はこのような実際の過去の経験に基づいて感覚が刺激されるわけではありません。誘発される感覚は心の中のイメージとして(ここでいうレモンを想像すること)ではなく、個人空間で感じられます。それは意図的な発生ではなく、すでに結合された感覚として生じます。共感覚のある人が数字の4を見たときに、同時に緑色が見える、といった具合です。そしてそれは個人空間で発生するので、ある人にとっては緑色でも、ある人にとっては赤色に見えるのです。この結合基準はその人の生涯に渡って変更することはない、と言われています。

共感覚の種類

一番多いのが、文字(数字、アルファベット、かな文字など)に色が見える共感覚です。日本でも海外でもこのパターンが大多数を占め、特に興味深いのは、日本人の共感覚者はすべての漢字に色を見ることは稀で、たいてい数字・アルファベット・かな文字に限定されている点です。共感覚が先天的・遺伝的要因と環境的・文化的要因のいくつかの要素が重なり合っていることを証明しています。音に色が見える共感覚を「色聴」と呼び、日本にも専門に研究する人がいます。また、サイコロの目など数に色を見る共感覚もあります。その他、欧米に多いのが時間単位に色が見える共感覚、そして人の雰囲気などに色を見る共感覚もあります。なかなかエキゾチックですよね。

共感覚の強みと弱み

共感覚は感情ともリンクしていると考えられていますが、精神障害ではありません。発覚時期にバラつきがあるのは、社会生活を送る上で共感覚がそれほど支障にならないことを証明しています。色視感覚を活かして、電話番号を色で記憶したり、人の名前や地名を色で分類して覚えたりと、何かを記憶する際にこの能力は非常に役立ちます。また、文芸分野でも才能を発揮することができます。音に色を見る作曲家は同じ色を違う音階で組み合わせて美しいハーモニーを生み出し、作家は独特な色彩感覚で物事を色で表現するスタイルを確立して今までにない新しい小説を書くことができます。弱みとしては、絵画をする際に実物とは違う色で表現したり、作曲や文章作成が奇抜すぎて「異端」と見られてしまうことがあります。